本格カットフルーツ風デザート「ギュッと完熟シリーズ」の開発秘話

~ 祖父母に「美味しい果物を食べさせてあげたい」という思いが商品になりました ~

今回のコラムでは、大好評をいただいております本格カットフルーツ風デザート「ギュッと完熟シリーズ」の誕生秘話をご紹介したいと思います

 

トーニチ株式会社(福島県福島市)は、学校給食を中心にフルーツ素材を活かしたデザートを全国に製造販売を行っております。また、近年は「高齢者」や「食に不自由な方」向けのデザートの開発、製造販売にも力を入れております。


超高齢化社会に突入し、ますますニーズが高くなってきた高齢者向け食品、その中でも高齢者が求めるデザートについて営業部長兼開発部長の鈴木貴之が自身の体験も交えて、開発商品への思いや、トーニチ株式会社が考える今後のデザート開発などをお話していきます。

 

【プロフィール】

鈴木貴之:1997年トーニチ㈱入社。品質保証部から製造部製造課長を経て、2007年から開発部。2012年に取締役開発部長。2017年より営業部長兼開発部長として現在に至る。

 

「ギュッと完熟シリーズ」誕生のきっかけ

 

日本は超高齢化社会に突入し2025年には全人口の約30%が65歳以上となります。私達も例外なく、高齢者と共に生活する場面が多くなってきました。私の家族も在宅介護の経験があります。ある日、祖父母と食後に会話していた時に「美味しい果物が食べたいなあ」と言いわれました。

私たちが生活している福島は、別名「くだもの王国」と呼ばれるくらい身近に美味しい果物がたくさんある地域です。初夏のサクランボ、真夏の桃、秋になると梨、ブドウ、冬は林檎と本当に身近に美味しい果物がたくさんあり、暮らしに溶け込んでいます。家族も、やはり「大のくだもの好き」一家です。
しかし、高齢となった祖父母は咀嚼や嚥下が低下してきているため、食事を小さく刻んで出したり、とろみをつけて出したりし、咀嚼や嚥下を考慮した食事を出しています。
そのため、旬の季節に収穫される「桃」や「和梨」、「林檎」などは繊維質と硬さもあり、食べること自体が咀嚼低下などの影響で億劫になってきていたそうです。美味しい果物がこんなにたくさん身近にある地域ですが、そう言えば「美味しい状態での果物をずいぶん食べていないのだな」と大変心苦しく思っておりました。

この身近にある美味しい果物を何らかの方法により「やわらかく」し、繊維質を除いて食べやすくする事が出来れば、祖父母にも美味しい果物を安心して食べてもらう事が出来るのではないか?と考えるようになりました。
自分なりに、いろいろと調べてみましたが果物をいつも食卓に出すのと同じように皮をむいてカットし、そのままの状態で繊維質を「やわらかく」するのは加熱時間などの調理に手間がかかる上に、果物の個体差もあって難しく、しかも美味しさを大きく損なわれることもわかってきました。
また、果物には美味しい旬の時期があるとはいえ、その時期は同じ果物ばかりが食卓に出るものです。バリエーションも増やしてあげたい、見た目からも食を楽しんでほしい、いつでも手軽に安心して食べられるようにしたい、そして少食になった祖父母がこれで栄養を摂り元気でいてくれたら、と実現したいことがどんどん膨らんでいきました。

トーニチ株式会社としての使命

「生の果物と同じ見た目ながら柔らかく食べやすいもの」というコンセプトで、身近にある「りんご」をカットした見た目そのままにやわらかく加工する技術開発を進めました。この開発により2015年に「りんごを軟化させる特許技術」を獲得、咀嚼の弱った方への商品「やわらかりんご」が完成し、販売を開始しました。

製造当初は仮のラインを組み、問題点を徐々に解決しながら商品力も改良していこうと始まりましたが、この商品の発想は良かったものの軟化のための製造工程が複雑で、しかも柔らかいことで工程中のロスも多く適正価格を実現できなかったこと、獲得した特許技術が他の果物に応用できないこと、特殊な工程により狙った風味や栄養価を実現できないことがわかってきて、総じて将来性を見込めないと判断し製造販売をやめてしまいました。


しかし、この取り組みを通して「やわらかりんご」のような考え方の商品が必要とされていることを確信し、その期待に応えることも私たちの事業の価値だろうと再度、一からの技術開発に踏み切りました。

新たな技術により実現する目標は、見た目と風味にこだわることを継承しながら、栄養価も高く、何より誰でも取り扱いやすい、というより高い理想から開発を再スタートしました。
いざ検討を進めると原材料や配合、製造工程のほとんどを見直す必要があり、これまで実現したことのない、全く新しい製造工程、商品像となっていきました。


それでも、この商品が出来れば自分の祖父母も含め、今まで旬の美味しい果物を食べていた地域の高齢者も喜ばせることができると考え、作りこみの試作を進めていきました。途方もない試行錯誤が続く中、特に果物の形状と連続生産に向けた製造工程開発は部署を超えた大変な苦労の連続でしたが、その甲斐あってこれまでの常識を超えた商品の実現にこぎつけました。

 

総力を挙げて完成した「ギュッと完熟シリーズ」

 

 

社員の協力により完成した商品の特徴は「カットした果物そのもの形状」「見た目は果物なのに軟らかく」「お皿にのせるだけで簡単に提供」そして、「いつでも好きな果物が食べられる」「硬さは安定しているし離水がほぼない」「冷凍庫から必要な分だけ取り出せて余らない」「ペースト食の方にもスプーンでつぶせて提供できる」というカットフルーツの形をした「本格カットフルーツデザート:ギュッと完熟シリーズ」が完成しました。

 

ラインナップとして、福島の身近にある果物「白桃」、「和梨」、「林檎」の3種類を用意しました。さらに、高齢者に必要とされる「カロリー」「鉄分」を少食の方でも無理なく栄養補給できるよう3粒(50g)でエネルギー80キロカロリー、鉄分6.0mgとしながらも、風味は生のフルーツがはっきり感じられるよう工夫しました。
そして、最もこだわった食感は、形を保ちながらも簡単につぶれるほど柔らかいのに、口の中でもバラけることなく食塊を形成しやすいように調整しています。

 

このデザート開発においては、摂食嚥下をはじめ多くのご意見と、ご協力をいただきました「駒沢女子大学人間健康学部健康栄養課」の工藤先生、「特定医療法人研精会食支援プロジェクト推進本部長、稲城台病食支援センター」の稲村看護師様には大変感謝申し上げます。

 

試行錯誤の上やっと完成した「ギュッと完熟シリーズ」を祖父母に持参し、食後のデザートとして食卓に出したところ、最初は「本物の果物」と思い込んで食べることに躊躇しておりましたが、お皿の上で「スプーンでつぶして」食べてもらったところ「これなら、やわらかくて美味しく食べられる」と言われました。
もちろん、「こんな美味しい商品を作ってくれてありがとう」という感謝の言葉が一番うれしかったです。

他の社員も身近にいる高齢者に持参したところ、喜んで食べてもらえた、という感想が続々と届くようになりました。美味しい果物を食べたくても食べられない高齢者はたくさんいらっしゃるという事があらためてわかった瞬間でもありました。
 

まとめ

私の祖父母も喜んで食べてくれた「ギュッと完熟シリーズ」は「いつでも、手軽に、本格カットフルーツ風デザート」が食べられる「高齢者」や「食に不自由のある方」向けのデザートです。3粒(50g)でエネルギー80Kcal、鉄分6.0mgを摂取できます。味は全3種類、「白桃」「りんご」「和梨」をご用意致しました。手軽に栄養補給ができるので低栄養や貧血の予防改善、術後の回復などにもご利用できます。

 

 

今後、弊社から「ギュッと完熟シリーズ」を使ったアレンジレシピのご提案もご用意する予定となっております。
これからの商品展開としては、形状を変更し、いろいろな種類を続々と追加予定となっておりますので新商品情報にも、ぜひご注目ください。

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