高齢になると、「食が細くなった」「あまり外に出たがらない」といった変化が見られることがあります。これらは、加齢による自然な変化と思われがちですが、実は”フレイル(虚弱)”の始まりかもしれません。

今回のコラムでは、フレイルの基本的な考え方や、なぜ「低栄養」がフレイルを進行させるのか、そして食事面からの予防策について、解説します。

 

 

フレイルとは何か?その背景と重要性

フレイルの定義と種類

フレイルとは、高齢者に特有の身体的、精神的、社会的な脆弱な状態を指します。主に筋肉や体重の低下、疲労感、活動制限、そして認知機能の低下といった症状が特徴です。身体的なフレイルだけでなく、認知機能や精神面での低下を含む「認知・精神的フレイル」や、社会的な孤立を要因とする「社会的フレイル」も存在し、これらが複合的に関係することも少なくありません。

フレイルとは、加齢による機能低下が進む中で、外部からのストレス(感染症やケガ)に対して回復力が減少した状態でもあります。この段階を見逃すと、寝たきりや要介護状態といった深刻な状況に進むリスクが高まるため、早期発見と適切な対応が健康寿命の維持において重要です。

高齢化社会におけるフレイルの課題

日本は超高齢化社会といわれるほど高齢者が多い国であり、フレイルの発症が大きな課題となっています。厚生労働省が実施した調査によると、低栄養状態の高齢者の割合が年々増加していることが明らかになっています。特に独居や社会的孤立、経済負担がフレイルの発症要因となり、多くの高齢者が低栄養や社会的孤立の悪循環に陥りやすい状況です。

また、フレイルは単なる健康状態の問題にとどまらず、医療費や介護費用の増加、家族やコミュニティへの負担増加といった社会全体への影響も避けられません。そのため、包括的な取り組みが求められています。

健康寿命と関連性

健康寿命とは、介護や支援を必要とせず、自立した生活を送れる期間を指します。この健康寿命を延ばすためには、フレイルを早期発見し予防することが重要です。

フレイルは進行するにつれ、サルコペニア(筋肉量や筋力の低下)やロコモティブシンドローム(運動器の障害)など、さらに深刻な健康問題へとつながるリスクがあります。適切な栄養摂取やバランスの取れた生活習慣は、フレイルを予防し健康寿命を延ばすための鍵です。特に高齢者においてはエネルギーやたんぱく質、ビタミン、ミネラルなどを適切に摂取する栄養指導が重要です。フレイルの兆候に気づき、必要な栄養や活動を取り入れることで、生活の質を向上させるとともに、社会全体の健康維持にもつながります。

 

フレイルと栄養状態の密接な関係

低栄養が引き起こす心身への影響

低栄養は、フレイルの発症や進行において重要な要因の一つです。特に高齢者においては、身体的機能の低下や筋肉量の減少が顕著に現れます。これにより、日常生活動作の困難や転倒リスクの増加、さらにサルコペニアやロコモティブシンドロームへの進行につながることがあります。また、栄養不足は免疫力の低下を招き、感染症にかかりやすくなるだけでなく、心理的な影響として抑うつや意欲の低下も引き起こします。フレイルは筋力や体重の減少、認知機能の低下を伴うため、低栄養の予防が精神的にも身体的にも重要と言えます。

必要なエネルギーと栄養素のバランス

フレイル予防のためには、適切なエネルギーと栄養素のバランスが不可欠です。高齢者はカロリー摂取を適正に保ちつつ、特にたんぱく質、ビタミン、ミネラルを十分摂取することが重要です。高齢者が1日に必要なタンパク質は体重1Kgあたり1.0~1.2gが目安とされていますが、不足してしまうと筋肉量の減少や体力低下を招くことがあります。一方で、過剰なエネルギー摂取は肥満や生活習慣病のリスクを高めるため、高齢者の健康状態や生活スタイルに適したバランスを心がけることが重要です。

高齢者に適した食事内容とは

高齢者がフレイルを予防するためには、多様な食品をバランスよく取り入れることが求められます。例えば、肉、魚、卵、大豆食品、乳製品を積極的に摂取し、不足しがちなたんぱく質を補うことが推奨されます。また、消化が良い食品や柔らかい食品を選ぶことで、咀嚼や嚥下に負担をかけずに栄養を摂取することができます。さらに、1日3回の規則正しい食事を心がけることで、食欲低下や栄養の偏りを防ぐことができます。特に単調な食事を避け、7品以上の食材を取り入れるように工夫することが重要です。

ビタミン・ミネラルの重要性

ビタミンやミネラルは、身体の代謝を支えるだけでなく、健康維持に大きな役割を果たします。高齢者は加齢に伴い栄養吸収能力が低下し、特にビタミンやカルシム、鉄分が不足しやすくなります。これらの栄養素が不足すると骨密度が低下しやすくなり、骨折や骨粗しょう症のリスクが高まります。また、ビタミンB群やビタミンCには免疫機能を高める効果があり、感染症の予防にもつながります。バランスの良い食事に加えて、必要に応じて栄養補助食品やサプリメントを活用することも、高齢者の健康維持に役立つと言えます。

 

フレイル予防に効果的な栄養指導のポイント

食べられる量が減る高齢者への対策

高齢者は、加齢や身体機能の低下により食べられる量が減ってしまうケースがよく見られます。この状態が続くと、必要なエネルギーや栄養素を十分に摂取できずに低栄養を引き起こすリスクが高まります。厚生労働省の令和4年(2022年)「国民健康・栄養調査」によると、65歳以上の高齢者の低栄養傾向は女性で22.0%、男性で12.9%と報告されています。そのため、摂取量の不足を補うためにエネルギーが多い食品や栄養補助食品の活用が重要です。

さらに、1日に何度か小分けにして食べる「少量頻回食」や、栄養価の高いスープやミキサー食などの工夫も効果的です。また、食欲が湧きやすくなるよう、見た目や香りを意識した食事作りにも配慮することが望まれます。これにより、栄養不足によるフレイルの進行を抑えることが可能です。

多様な食品を取り入れる工夫

高齢者の食生活は、調理や買い物への負担感から単調化しやすい傾向があります。しかし、フレイル予防には多様な栄養素をバランスよく摂取することが重要です。例えば、肉類、魚類、卵、大豆、乳製品といったたんぱく質や、野菜と果物などのビタミン・ミネラルが豊富な食品を適切に組み合わせる食事の工夫が求められます。

毎日7品目以上の食品を組み合わせることを目標に、野菜や果物を加えた彩り豊かなメニューや、一皿にさまざまな食品を盛り込んだ料理など、調理方法やアイディア次第で改善の余地があります。また、高齢者自身やその家族が食事に楽しみを持てるように、地域の栄養指導プログラムやイベントへの参加も奨励されます。これにより、栄養状態の向上だけでなく、社会的孤立の防止にもつながります。

口腔機能改善とその必要性

フレイル予防において、口腔機能の改善は栄養摂取を可能にする重要なポイントです。加齢により咀嚼や嚥下機能が低下するだけでなく、義歯や口腔内の問題も食事量の減少に影響を及ぼします。これに対し、適切な形態の食品を選ぶことや、口腔リハビリを取り入れることが効果的です。

例えば、やわらかく調理された食品や、嚥下しやすいゼリー状の食品を活用することが推奨されます。また、歯科医師との連携により口腔機能の評価や適切な介入を行うことで、食事時の不安を軽減することが可能になります。こうした対応を通じて、食べる喜びを維持し、必要な栄養をきちんと摂取できる環境を整えることが、フレイル予防にも効果を発揮します。

 

栄養以外にも重要!フレイル対応の全体像

3つの柱:栄養、運動、社会参加のバランス

フレイル予防には「栄養」「運動」「社会参加」の3つの柱をバランスよく実践することが重要です。栄養面では、必要なエネルギーと栄養素を適切に摂取することで健康な身体を維持します。一方で、運動は筋力低下を防ぎ、身体機能の維持に寄与します。また、社会参加は心の健康維持や孤立を防ぐ役割を果たし、高齢者が精神的に充実した生活を送るために必要不可欠な要素です。これら3つの柱を包括的に取り組むことが、高齢者がフレイルを予防し、健康寿命を延ばすカギとなります。

身体活動と社会参加の役割

身体活動は、フレイル状態にならないための基盤として欠かせません。ウォーキングや体操などの軽度な運動が、筋力だけでなく心肺機能の維持にも役立ちます。加えて、社会参加もまたフレイル予防において重要な役割を担います。地域のサークル活動やボランティアなどへの参加は、高齢者が他者と交流する機会を増やし、精神的な孤立を防ぐとともに生活の充実感を高める効果があります。このように、身体活動と社会参加の両面で活動を促進することは、フレイルを予防する上で非常に有効です。

環境要因とフレイルの関連性

フレイルの発症には、住環境や社会環境が大きく影響しています。例えば、生活リズムが乱れやすい一人暮らしや、買い物が不便な地域に住む高齢者は、食事が単調になったり栄誉不足に陥る可能性が高まります。また、社会的孤立や経済的困窮がフレイルの進行を促進する場合もあります。そのため、環境整備や地域ネットワークの強化を通じて高齢者を支えることが重要です。厚生労働省や自治体が進める住みやすい地域づくりが、高齢者のフレイル予防に大きく貢献するでしょう。

家族やコミュニティの支援がカギ

フレイル対応において家庭や地域コミュニティの支援は欠かせません。家族が高齢者の日々の食事や運動をサポートすることで、必要な栄養や身体活動量の維持が可能になります。また、地域コミュニティが提供する支援活動やイベントは、高齢者の社会参加を促し、孤独感を和らげます。さらに、医療や介護分野との連携を強化し、早期にフレイルの兆候をキャッチする取り組みも必要です。家族や地域全体で支援することで、高齢者が健康で生き生きと暮らす社会を目指すことができます。

 

まとめ

いかがだったでしょうか?

フレイルは、早い段階で気づき、適切に対応することで進行を防ぐことができます。特に”食べる力”を守ることは、健康寿命を延ばす上でも非常に重要です。

一人ひとりの状態に寄り添いながら、栄養・運動・社会参加のバランスを意識した取り組みを、日常生活の中に少しずつ取り入れていきましょう。

 

 

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