食欲不振は、高齢者の健康に深刻な影響を及ぼす原因の一つです。年齢が上がるにつれて、食欲が減退した結果、栄養不足(低栄養)が懸念されます。
しかし、これにさまざまな対策があるので提供者側が工夫しながら、バランスの取れた食事を提供し、栄養価の高い食材を取り入れていくことが重要となってきます。
今回のコラムでは、高齢者の食欲不振時の栄養補給について書いてみます。
高齢者の食欲不振の原因
高齢者がどうして食欲不振になるのか?食欲不振の原因はさまざまですが、いくつ書き出してみます。
・身体の変化
高齢者は、代謝率が低下し筋肉量が減少する傾向にあります。筋肉量が低下すると、外出等が面倒になり、活動量も少なくなりがちです。
これにより、エネルギーの必要量が減り、お腹が空かなくなるため、食欲や栄養吸収が低下します。
・咀嚼力、嚥下機能の低下
高齢者は、食べ物を噛む(咀嚼)機能や飲み込む(嚥下)機能が衰え、これまでにより普通の食事が食べにくくなります。
そして、上手くの飲み込めずに食べ物が気管に入ってしまう「誤嚥」を引き起こすと、肺炎の要因になりかねません。
このような状況から、食べることを楽しめなくなり、誤嚥の不安を感じてしまい、食欲の低下につながる場合もあります。
・味覚、嗅覚、視覚の変化
高齢者は、歯が減って歯茎が退縮することで食べ物が十分に咀嚼されず、味を感じる細胞や味覚受容体に適切に刺激が伝わらないことや、その細胞や味覚受容体の数や感度が減少することで、味覚を感じにくくなります。
鼻腔の組織や粘膜が変化し、嗅覚に影響を及ぼすことがあります。
老化により食べ物が見えにくくなることや、白内障によって食べ物の色が変わって見えることも食欲が低下する要因となります。
・薬の副作用
高齢者は多くの薬を服用していることがあり、これらの薬が食欲に影響を与えることがあります。
・孤独感やうつ
孤独感や抑うつ症状は高齢者によく見られ、これらの感情が食欲不振を引き起こすことがあります。
食欲不振が続く時のリスク
高齢者の食欲不振が続くと、さまざまなリスクが発生する可能性があります。そのリスクを書いてみました。
・栄養不足
食欲不振が続くと摂取カロリーや栄養摂取量が不足し、体重が減少し栄養不足のリスクが高まります。特に、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどの重要な栄養素が不足すると、筋肉量の減少、免疫力の低下、骨粗しょう症などの健康問題が生じる可能性があります。
・身体機能(体力)の低下
食欲不振により栄養摂取が不十分な場合、筋力や体力が低下し身体機能の衰えが進む可能性があります。日常生活動作の制限や転倒や骨折などのリスクが増大します。
・認知機能の低下
食欲不振が続くと、脳への栄養供給が不十分になり、認知機能の低下が進む可能性があります。これにより、記憶力の低下や認知症のリスクに影響を及ぼす可能性があります。
・感染症リスク
食欲不振が続くと、免疫機能が低下し、感染症にかかりやすく重症化しやすくなります。
・心血管疾患のリスク
食欲不振により高血圧や高コレステロールなどのリスクが増加し、心血管疾患の発症リスクが高まります。
・社会的孤立
食事は楽しい社交の場でもあるため食欲不振が続くと、うつ病や孤独感などの心理的な問題が発生する可能性があります。これにより、食事を楽しめなくなり、さらに食欲不振が悪化する悪循環に陥ることがあります。
・薬の効果が低下
高齢者は慢性的な疾患で複数の薬を服用していることが多く見受けられます。食欲不振が続くと薬の吸収や代謝が変化し、服用している薬の効果を低下させることがあり、慢性疾患の管理が難しくなる可能性があります。
これらのリスクを考慮すると、高齢者の食欲不振を放置せず、早期に適切な対策を講じることが重要です。専門職(医師、歯科医師、管理栄養士、看護師など)の指導を受け、栄養補助食品や食事の調整などの対策を取ることが重要です。
栄養補給のおすすめ方法5選
高齢者の食欲不振に対処するためにの栄養補給方法をいくつか考えてみました。
バランスの取れた食事と水分補給
高齢者にはバランスの取れた食事が重要です。主食、たんぱく質、野菜、果物、乳製品など、さまざまな食品を摂るように心掛けましょう。
特に、たんぱく質摂取を意識するとよいでしょう。また、食事の際には水分補給も摂ることで、脱水症状を予防し体調を維持しましょう。
少量の食事で回数をふやす事と社交的な食事シーンの提供
高齢者は、一度の食事量を増やすのが難しいことがあるので、少量で回数を増やす食事する工夫がおすすめです。
これにより、胃に負担を大きくかけずに栄養を摂ることができます。
また、孤独感や抑うつを軽減するためにも、社交的な食事が役立つことがあります。家族や友人と一緒に食事を楽しむ機会を提供しましょう。
見た目や香りを工夫した食事
食事を美味しく見せる工夫をすることで、高齢者の食欲を引き出すことができます、料理の見た目や香りを工夫し、食べやすい形状に切ったり調理したりしましょう。
栄養補助食品の利用
高齢者の食事に足りない栄養素を補給するために、専門職(医師、歯科医師、管理栄養士、看護師など)の指導のもとで栄養補助食品を利用することがあります。
医療チームへの相談
高齢者が服用している薬が食欲に影響を与えている可能性があるため、医師に相談し、必要であれば薬の調整を行うことも重要です。
栄養状態が悪化している場合は、医療チームと連携して専門家の指導を受けることが必要です。栄養士や看護師からのアドバイスを受けましょう。
【関連記事】高カロリーな栄養補助食品は高齢者のミカタ!特徴や提供の際のポイント解説!
まとめ
いかがでしょうか?
高齢者の食欲不振は、健康に悪影響を及ぼす可能性があるため適切な栄養補給が必要です。
バランスの取れた食事、少量で回数を増やす、見た目や香りの工夫、栄養補助食品の利用、水分補給、社交的な食事シーンの提供などが役立つ方法です。
ただし、個々の状況に合わせて医師や専門家のアドバイスを受け入れて対応していくことが大事です。
高齢者の健康と幸福を支えるためにも、栄養補給に積極的に取り組みましょう。
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